『スローカーブを、もう一球』山際淳司

スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962))

スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962))

珍しくノンフィクション。いや、こういうのってどうしても甘ったるい泣かせでベタベタになっているか、さもなきゃ説教臭い訓話めいたもの、みたいな偏見があるもので。ともあれ、これはそんなこともなく、特に「江夏の21球」とかは無条件に燃える。というわけで、割と有名かと思うけど一応言っておくと、スポーツの、一瞬にかける人間に焦点をあてたノンフィクション。
内容的には、80年代当時の新しい考え方、ってやつが今では別に驚くことではない所為で、若干古臭く感じてしまうものの、スポーツ自体の駆け引きとかの熱さは普遍的なものだから普通に読める。スポーツとは割と縁遠い人生送っているけれど、こうして物語として差し出されるとすごく楽しそうで、ちょっぴり羨ましい。

『結晶世界』J・G・バラード

結晶世界 (創元SF文庫)

結晶世界 (創元SF文庫)

ダメです、降参。さっぱり理解できません。だらだらと斜め読みした所為もあるけど、内容が全然頭に入ってこない。バラードの“オールタイムベスト”と裏表紙に書いてあるくらいだから、たぶんすごい作品なんだろうけれど、俺の手には負えなかった模様。
解説にも書いてある通り、確かに水晶化していく世界の情景描写は寒々とした美しさをたたえていて、感じ入る部分も無いではないけれど、表層的な意味でのメインストーリー、すなわち主人公を取り巻くいくつかの三角関係にどうにも面白味を感じられない。おそらく自分の理解力の乏しさ故だろうが、感情の揺れ動きが掴めない。活劇もあるにはあるが、その退屈を埋めるほどでもなく、結局平板に感じられてしまう。
理解できなかった、という一点において感想述べる資格なさげですが、素朴に言ってしまえば、読むのは結構な苦痛でした。以上。


評価:−

ティム・バートンの「コープスブライド」

なんだか、映画は久しぶり。しかし、なんでわざわざ“ティム・バートンの”をつけるのかね。“スピルバーグの”とか、“マイケル・ベイの”とかでもあるのか。
たわごとはさておき、あらすじ。

19世紀のヨーロッパの片隅、ドート家とエバーグロット家の結婚が行われようとしていた。片や新興の成金、片や没落貴族。絵に描いたような政略結婚。けれど、当事者の2人――気弱な青年、ビクター。“愛のある結婚”を夢見る、ビクトリア――はまんざらでもない様子。このまま万事上手く収まるかと思いきや、ビクターはリハーサルに大失敗、近くの森で練習することに。けれど、それがトラブルの始まり。不幸な偶然が重なって、ビクターは死体の花嫁(コープスブライド)――エミリーに、結婚を誓ってしまう。かくして、死者と生者の奇妙な三角関係が始まってしまったのだった。


とにかく、よくできたお話。ストーリー自体は、決して目新しいものじゃない。意外な展開や、斬新な演出なんてものもない。すべてが収まるべきところに収まる、実にウェルメイドなつくり。悪く言ってしまえば、予定調和。
だから、問題となるのは細部なのだけれど、それがもういちいち決まる。クスリとさせるところでは、きちんと楽しく、涙を誘うところでは、きちんと物悲しい。
時間的には短めな所為もあって、物足りないところもあるけれど、それはもう贅沢な望みでしょう。本当にいいものを観た、という感じ。おもしろかったです。

本を読んでないと、ちっとも更新できない、という自分の体質をいい加減どうにかした方がいいと思う今日この頃、みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
合宿ネタとか書くことが全くない、というわけでもないのだけれど、俺のプライベートに興味ある奴なんているのだろうかいやない(反語的表現)。そういえば、高校の古文の授業で反語の文章を訳すとき、後ろにきちんと「〜、いや、ない」の部分をつけなきゃ間違い、というのは解せなかったなあ。ザ・思い出話。……いや、華のない青春生活だったもので。

哀悼の鐘をトリガーで鳴らそう

し、死ぬ……。というわけで、ただいま絶賛強行軍中です。
パトラッシュ……ぼく、なんだかとっても眠いんだ……。
もう、ゴールしてもいいよね?
死して屍拾う者無し!
あ、朝日だ……。
Anywhere but here.そうだ、京都いこう。


はあ、ぼくがねむっているあいだにこびとさんがすべておわらせておいてくれないかなあ……。
こびとさんは、あらわれてくれませんでした……。

『サマー/タイム/トラベラー2』新城カズマ

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

「〈プロジェクト〉よ」
饗子のこの一言で、ぼくらの夏は始まった。より正確に言うなら、誉れ高き伝統あるマラソン大会のあの日、悠有がゴールテープを切らずにゴールした時から全てが始まったんだ。テレポーテイション、時空間跳躍、「悠有の素敵な超能力」。非建設的な努力が本質の〈プロジェクト〉にはうってつけのテーマ。最初は誰も真面目に考えてなんかいなかった計画はけれど、悠有が跳んだ瞬間を目の当たりにしたことで一層の熱を帯びることになった。
――そう、そのときのぼくらはその先に何が待ち受けているかなんて知るよしもなかったんだ。それが悠有と過ごす最後の夏になるなんてことは。

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評価:A−