『悪魔のミカタ⑥、⑦』うえお久光

小鳥遊恕宇と冬月日奈の出会い。或いは、小鳥遊恕宇はいかにして「小鳥遊恕宇」となったのか、の物語。その始まり。
ほんのり連作短編風味。個人的に驚いたのは、いちエピソードとして出て来る推理問題が、意外に出来がいいこと。そのまま短編として仕上げられそうなほど。
話的には、登場早々退場してしまった日奈のキャラクターの掘り下げ、といった位置付けでしょうか。小鳥遊と日奈との対決(?)を縦糸に、日常に立ち表れる大小の事件を横糸に描かれる、小学校ライフが何ともへんてこで(どうみても芋虫にしか見えない「ゆやん」とか「ゆよん」とか「ゆやゆよん」とか鳴声をあげる謎の生き物が謎過ぎる)頭狂いそうで楽しい。
先を知るものとて、メインとなる小鳥遊の対抗心はひとり相撲なのはまるわかりなわけで、そういった意味でまあ、想像の範疇に収まっているのは否めないけれど、十分に楽しい。
評価:C+そして、ストレイキャットである。つうか、なぜ破壊神なのか、と。唐突過ぎて、最初ついて行けなかったよ!
さて、実はあんまり言うことがない。なぜって、俺は「語り」の力というものを持ってこられると滅法弱いから。どうしても諸手を上げて肯定してしまう。
言葉、というものの持つ力。ペンは剣よりも強し、じゃあないけれど、でもきっと強いと思う。たぶんその言葉に込められた力とはすこし違う意味で。
閑話休題
それにしても、巻を重ねるごとにぐんぐんと上手く面白くなっていくなー、この作者。個人的なターニングポイントは5巻。あれで、完全に見直した。惚れた、といってもいい。まあ、すでに一定の評価を得ている作者に向かって何を言ってるんだか、って感じだけれども。ともかく、たいへんに面白かったです。
評価:B


追記:ところで、やっぱりこの人、西澤作品に影響受け過ぎだよなあ、と思います。知恵の実の設定は、<チョーモンイン>と思いきしかぶってるのは常識として、この7巻での消えた猫の問題の扱い方がモロ酩酊推理。「想像だけど……」と前置きしてる上に、むしろ無理のある方の推理が正鵠をえているあたりなんて、もう。
つうかさ、『このライトノベル作家がすごい!」のインタビュアーもさ、突っ込もうよ、そこ。も、なんか、変な勘繰りをしたくなってしまいますよ。