『輝く断片』シオドア・スタージョン

輝く断片 (奇想コレクション)

輝く断片 (奇想コレクション)

まるで嫌がらせのようなタイミングで発売した、≪河出奇想コレクション≫のスタージョン短編集、その第2段であります。以下、いくつかについて感想をつらつらと。

  • ニュースの時間です

SFマガジン掲載時に読んでぶっ飛んだものだけど、再読してもやっぱりぶっ飛んだ。あらゆるニュースを洩らさず聞くことが趣味の男の顛末を書いた物語。一体全体どうすればこんな物語が思いつけるのやら。などといいながら、この話自体はハインラインが原案だったり(^^; まあ、どちらにしてもこの荒唐無稽な物語を読ませてしまうのだから、凄いことに変わりない。

完成度からいえば、屈指でしょう。ジャズバンド付きのMCが、そのリーダーを殺そうとする話。しかし、それが果たされたかと思われた中盤以降の展開といったら! 音楽というものの特質をここまで正確に理解した上で、それを犯罪小説に活かすその手腕に圧巻。

  • ルウェリンの犯罪

どう考えても喜劇にしかなりようにない設定なのに、どうして悲劇になっているんだろう? 最後の一文がここまで切ない話もありません。

  • 輝く断片

スタージョンに対する自分の勝手な思いこみが粉砕された一篇。完成度からいえば「マエストロを殺せ」に譲るだろうけれど、衝撃度という意味ではこちらの方が数段上。誰にも必要とされてこなかった男が、傷ついた女性を拾うことによって変わっていくのは他のスタージョン作品と同様だけれど、その結末は……。


スタージョン作品の特徴に、マイノリティに対する視線を挙げられるだろうけれど、そこに“優しい”という修飾語は必ずしもつかないんだよなー、と思い知らされました。思い込みって怖い。終盤は畳み掛けるように重い話が続くけれど、前半には軽い話もあったりしてバランスも取れた短編集でした。や、大満足です。
評価:A