『十二宮12幻想 (講談社文庫)』監修・津原泰水
- 作者: 津原泰水
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/05
- メディア: 文庫
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- 「さみだれ」(双子宮)飯野文彦
まさか主人公が実は×××××とかじゃないだろうな?とか思ってたら、捻りなしに予想した通りだった。けれど、不思議に印象が良い。それはたぶん、装飾の部分――押入れと深い山奥がつながっている、などのエピソード――が割と自分の気に入った所為かな。
個人的にはベスト。や、まあ自分が蟹座って所為もあるけど。好きになった男性との間に見える、自分とつながった赤い糸。ある日、彼が見せた醜い顔に怯え、けれど赤い糸が絡まって逃げられない。あわや、という時に現れる蟹が、糸と男の首を鋏で断つ、その血飛沫の鮮烈なイメージ。丁寧なですます調で語られ増す幻想性が心地よい。
冒頭いきなり犯され殺される主人公が、死して平然と今を語り過去を振り返る。静かに狂っている感じが良い。
恋人を失った主人公。彼の死の1週間後、届いた荷物。それは、彼からのビデオレターだった……。
落し所は想像の範囲内だったものの、何気にハッピーエンドっぽいのに驚いた。
エロス。最初、主人公の相手が男であることに驚いたけど、すぐにそのあとレズビアンでもあることがわかって、妙に安心した。さすが、森奈津子。で、内容はエロス。著者のフェティシズムというか、エロチシズムはやはり卓抜としたものがあるなあ。
- 「二十九日のアパート」(磨羯宮)加門七海
年の瀬の慌しい時期に生まれた女と、間抜けな理由で誤って死んでしまった男。二人の情けなくも微笑ましい掛け合いが楽しい。終わり方も、実に綺麗。
- 「あたしのお部屋にいらっしゃい」(宝瓶宮)飯田雪子
「年に一度――あたしの誕生日くらい、祝いにきてくれたって、いいでしょう?」 別れ際に交わした約束の日、私は彼を待つ。モノクロームの部屋の中で、彼がくれた赤い金魚とともに。
とにかく、ビジュアル的に美しい。ストーリーライン自体は別に普通だけれど、細かい描写が心地よい。
評価:C+