『ちーちゃんは悠久の向こう (新風舎文庫)』日日日

ちーちゃんは悠久の向こう (新風舎文庫)

ちーちゃんは悠久の向こう (新風舎文庫)

新人賞5冠ということで、(一部で)話題沸騰だけど受賞しているのがいまいちマイナー*1なため隣の人に思わず「すごいんだよ、ね?」と確認したくなる天才高校生、日日日と書いてあきらと読む人のデビュー作。うーん、評価に困るなあ。

「あたしらの高校にはナント吃驚『高校七不思議』みたいなモンが伝えられてるみたいなんだよね、いやいや怪談とかではよく聞くけれど生で七不思議に触れたのは初めて。あたしは猛烈に感動している。感動しすぎて髪の毛逆立っちゃった」
不可解な体構造している奴である。

ちーちゃんこと歌島千草は、僕のお隣さんで幼馴染。そんな彼女は、幽霊好きで怪談好き。いつも振り回されっぱなしな僕は、それでもそんな平凡な日常を愛していたし、いつまでも続くと思っていた――あの時までは。
文章が若いなあ、という印象。誰かがどこかで言っていたけど、アクの無い西尾っぽい感じが確かにあって、読んでいて心地よい饒舌体ではあるのだけれど、それがなんか中身を薄めてみました的感覚を個人的には感じたわけで。それはまあ暴論としても、何となく閉じた世界だなあとは思う。読んでいて自分の世界と地続きという感じがあんまりしないのだ。それはきっと一人称という表現の仕方の弊害なんかなとも思うけど、どうも視野狭窄な感じが拭えない。まあでも、それは好みかも知れずと思考放棄したところで、結局面白いかどうかというところを考えると、これが確かに言われるだけあって面白かった。困ったものである。いや、別に困らないけど、実におれ好みのヘンな話なのだ。ともかく、だからうだうだ言ったところで粗探しにしか過ぎんのかなとも思うわけで、むしろ才能の伸びしろがあるだけ将来性あるじゃんと前向きに捉えてみよう。でもなんか、いまいち手放しで褒められないんだよなー。ま、続刊読んで判断しよ。
評価:B−

*1:新風舎文庫大賞・恋愛小説コンテスト・エンターブレインえんため大賞 佳作・角川学園小説大賞 優秀賞・MF文庫J新人賞 佳作