『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)』桜庭一樹

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

昨日に引き続いて、暗黒の青春ミステリー……って、全然ミステリーじゃねえし。*1でも、これは暗黒というより藍色。深い深い、海の色。

「友達になって」
「……あんた朝、あたしに『死んじゃえ』とか言わなかった? そんなこと言うやつといい感じの友達になんてならないと思うけど。ぜったいやだよ」
「あれは愛情表現」
「ばかじゃないの……」

あらすじ。早く卒業して社会に出たいと思っているリアリストの中学生、山田なぎさと、自分を人魚と言い張る転校生、海野藻屑。2人は出会って、いつか分かり合う。実弾が欲しかった。溶けて消えてしまう、砂糖菓子の弾丸ではなく、実弾が。けれど、彼女たちはやっぱり子供で、どうしようもなく無力で――――。
いろいろ感想は浮かぶけれど、うまく言語化できません。本当に、誰もどれも哀しくて切なくて痛々しい。やりきれない。青春なんて言葉で誤魔化してはいけないもの。大人になるということ、子供であるということ。そうしたすべてが詰まっている、そんな印象を受けました。
構成やレトリックが、物語・主題に奉仕しているという意味で傑作。取り敢えず、読め。
評価:B+

*1:いまさら、富士ミスに言うことでもないが