『仔羊たちの聖夜(イヴ) (角川文庫)』西澤保彦

仔羊たちの聖夜(イヴ) (角川文庫)

仔羊たちの聖夜(イヴ) (角川文庫)

ビバ、暗黒の青春! もう誰も信じられませんっ!
あらすじ。タックこと匠千暁、ボアン先輩こと辺見祐輔、タカチこと高瀬千帆、の3人が初めて出会った1年前のクリスマスイヴ。その日、彼らは女性の転落死を偶然目撃する。そして、1年後の現在、どさくさで紛れてしまったその女性のプレゼントを返すために、身元を辿ることになったタカチとタック。しかし、調べてみると5年前にも似たような事件が起こっていて……。
というわけで、匠千暁シリーズの時系列順でいうと3作目にあたる本作。キャンパス4人組のひとり、タカチが自分の心の闇のその一端に立ち向かいます。
出てくる直接的・間接的な犯人すべてが、厭な人間てのがすごい。しかも、いかにも身近にいそうな感じの。気分悪くなること請け合いです。孤高の美人タカチやどこか超然としている割に頼りないタック、何よりあつかましいのに不思議と憎めないボアン先輩など、主人公たちが魅力的なだけ余計にね。しかし、トラウマ持ちの人間の多いことだw
ミステリ的には、パズルのピースは確かに全て与えられているけれど、これで真相に辿りつくのは無茶というもので、フェアかそうでないかで言ったら正直アンフェアでしょう。まあ、そもそもトリックがどうこう、といった感じでもないし、なにより伏線が回収されて浮かび上がる真相の衝撃度からすれば、そんなのは些細なことです。本当にひどい。人間不信になれます。ぜひ読みましょう。
それにしても、著者はよっぽど家族に対して屈折した思いを持っているのでしょうか。そんな邪推をしてしまうほど、えげつない描き方。まあ、勿論そんなことないのはわかってますが。
評価:B