『血の12幻想 (講談社文庫)』監修:津原泰水

血の12幻想 (講談社文庫)

血の12幻想 (講談社文庫)

「血」をテーマにしたアンソロジー。以下、適当に印象に残ったものの雑感。

拓哉という人物から姉へと宛てた一方的な書簡。最初は何の変哲もないものだったが……。短編としての出来はこれがいちばん、かな。腑に落ちる結末なのに、不気味な余韻もある。全てが語られないのもにくい。

巨○の星の、最悪なパロディ。話には聞いていたけれど、本当に駄洒落作家なのね。もう脱力。しょーもねー!

朝起きたら、浴槽に溜まった鼻血で体が固まってしまった男の話。ありえないけれど、実際にあったら間抜けかつ何気に深刻な状況が、どこかとぼけた文体で語られる。終盤の悪夢なんだか何なんだかな展開が素敵。

といえば、グレン・ミラー……ではなく、日常に倦んだOLが、同僚の奇妙な行動が気になって――という話。きれいにまとまっているのだけれど、恩田陸に求めているのはこんな普通の話じゃない、という気はします。

文字通り、なぜか血まみれになってしまう家族を描いたスラップスティック・ホラー。日常に溶け込んだ異常が、そこはかとなく笑える。ちょっと、シット・コムっぽい。それにしても、命が安いなあ。
評価:C(平均して)