『ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)』岩井志麻子

ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)

ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)

著者はエキセントリックな感じな割に、内容は直球ど真ん中のストレートなホラー。怪異に説明をつけないあたり、潔い。しかも、それがきちんと怖さにつながっている。こわい、こわい。

実はこれは……いや、やめとこう。それ教えたら旦那さんほんまに寝られんようになる。脅かすわけじゃあないけど、この先ずっとな。

表題作は、最後のオチも含めてきれいにまとまっていて、それが逆に物足りない、といってしまっては贅沢か。「密告箱」はすこし理が勝ち過ぎている感じ。確かに怖いけれど、著者に求めている怖さはそっちじゃない、という気がする。「あまぞわい」はジェンダー論めいた物があったりしておもしろい。2重写しとなった名前の由来が、物語の奥行きを深めている。ただ、最後まで読むとそんなことはさておいて、ただただ怖いのですが。「依って、件の如し」。わかりきった真相をどうして最後まで引張るのだろうと思っていたら、もっとひどい真相が隠れていたりして、本当にひどい。
評価:B−