高橋弥七郎『灼眼のシャナⅨ』

やっぱりエンターテイメントに徹している作品はいいですね。安心して読めます。
あらすじ。男に現を抜かして己の鍛錬に身の入ってない娘を嘆かわしく思い、娘の想い人を排除しようとする母親。抵抗する子供たち。そして、ただおろおろとしている父親。彼氏の家族や彼に横恋慕する少女をも巻きこんで、繰り広げられる壮絶な戦い。果たして、このはた迷惑な母子喧嘩の行方は!?
……ん、ちょっと違う?(大いに違います)
というわけで、強烈な引きだった前回、その解決への顛末が語られるわけですが。見所はたくさんありました。相変わらずどこかボケているヴィルヘルミナ、坂井千草最強説、もはや完全に<恋する乙女>モードのシャナの可愛らしさ、悠二の中に蔵される≪零時迷子≫に隠された謎の一片、教授、アラストールの完全なるシャナパパ化、などなどなどなど……。そう、いろいろあったのですが、
あの人の登場が全てを掻っ攫っていきやがってくれました。
あまりに予想通り、あまりに期待通り、あまりに理想通りな、素晴らし過ぎるキャラ造形はもはや反則。読んでいてニヤニヤ笑いが止まりません。ていうか、いつ「忍術を少々」とか言い出すかと思ったよ!
しかし、876先生は意外と“お約束”を守ってしまうんだなあ。まあ、いい意味でハリウッド的なB級っぽさを持つ作品ですからそういうのを踏まえるのは合っている気がします。
個人的には、悠二がいきなりパワーアップとかしてなくて一安心。御都合に過ぎるのは興ざめなので。あと、大人がきちんと格好いいってのはやっぱりいいですね。出来過ぎという気もしますが。
少し不安なのは、一段落ついたということで話が停滞してしまうのでは、ということ。出来れば、このままクライマックスまで突っ走って欲しいけど、さてどうなりますやら。あと、悠二の恋の三角関係はそろそろ決着つけて欲しいなあ。端から読んでいると、答えが明白なだけに。まあ、ああした思春期らしい潔癖さに無理を感じるほどではないけど、それでも。
評価:B−