渡瀬草一郎『空ノ鐘の響く惑星(ほし)で⑥』

表紙といい、カラー口絵といい、描かれているのが全員男ってのは電撃的によろしいのでしょうか、と変な心配をしてしまうSF風味の戦記ファンタジーの6巻。
あらすじ。ついにタートムとの戦端が開かれたアルセイフ。そんな中、第四王子であるフェリオは、記憶喪失となってしまった幼馴染のウルクを助けるため、神官たちをジラーハの手より助けるため、神殿に赴いていた。その彼のもとに、ウィスタルの甥を名乗る青年が訪れて……。一方、来訪者のムスカは、この世界と自分たちとの世界との関係に関してある仮説を導き出す。それぞれの思惑を孕んで、しかし、事態は思わぬ方向へと――。
今回の話で、だいぶこの世界について明かされました。それについては、確かに思いついてはいなかったものの、驚くほどではない、かな。けれど、今までの伏線が見事に昇華されていく手際には感嘆するしかありません。お見事。ただ、このまま来訪者関連の方へと話が流れて、タートム戦やらなんやらが有耶無耶にならないかとちょっと不安。俺としては、譲歩と妥協を繰り返すような政略とかがもっと見たいわけですよ。まあ、渡瀬先生なら大丈夫だという気はしますが。
話運びは、実に堂に入ったもの。基本的に神殿内で繰り広げられる地味な展開なのに、中盤のベリエとリカルドの悪巧みのために、えらい緊張感。そして、最後の凶悪な引き。本当に上手いなあ。
キャラクターとしては、相変わらずリセリナ、ウルクの両ヒロインがすばらしく可愛いです。というか、今までの渡瀬作品で最も乙女ちっくではなかろうか。普通なら狙い過ぎと思うところ、細やかな心理描写がそれを感じさせません。特に、記憶喪失ながらまたフェリオに惹かれ始めているウルクなんて、眼福にも程があります。あとは、パンプキンが良過ぎ。かぼちゃかわいいよかわいいよかぼちゃ。ただ、ウィスタルの甥の彼はちょっと都合良過ぎるような……? まあ、ストーリー上の必然性は認めますが。
そんなわけで、今回も実におもしろかった。私としては、打ち切りにならないことを祈るばかりです。そのためにも、たくさん売れてくれるといいなあ……。
評価:B