若竹七海『ヴィラ・マグノリアの殺人 (光文社文庫)』

ヴィラ・マグノリアの殺人 (光文社文庫)
ブラッドベリがどうにも読み進められなくて、ついこちらに逃げてしまった。ああ、やっぱり若竹作品は黒面白いなあ……。
あらすじ。湘南に位置する葉崎*1、その海に臨むヴィラ・マグノリアの3号棟で死体が発見された。部屋は密室状態、しかも顔を潰されて。かくして、捜査が始められるのだが、住民たちはみんな何かを隠しているようで……。
一見、“ユーモアをちりばめたコージー・ミステリー”*2なのに、その実、中には致死量越えそうな毒が含まれているあたりがミソ。彼らはおとぎ話の住人ではなく、血の通った人間なんですね。つまり、描かれる悪意が等身大。もう、読んでいて嫌な気持ちになることならないこと。『スクランブル (集英社文庫)』と比べて、人物の書き分けが上手いのもそれに拍車をかけます。これで、後味が良かったりするんだから、はあ、もう感心すること頻りです。
それにしても、若竹七海、クレイグ・ライス好きなんだなあ。双子の会話なんて『スイート・ホーム殺人事件 (ハヤカワ・ミステリ文庫 28-1)』を彷彿とさせられたよ。生意気だったり、こまっしゃくれたりするあたり、特に。って、これしか読んでない俺が何を言うかって感じですね。すみません。
はあ、ともあれ本当に面白かった。久しぶりに一気に読みました。

*1:架空の町。たぶん葉山+茅ヶ崎

*2:cozyとは、居心地の良い、親しみやすいの意。「小さな町を舞台にし、主として誰が犯人かという謎をメインにした、暴力行為の比較的少ない、後味の良いミステリ」(著者自身の説明、解説より引用)