『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)』麻耶雄嵩

翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)

翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)

いまさら。っていうか、読んだことなかったのかよ!というツッコミがどこかから聞こえそうだ。
ああ、ついに新本格が素直に楽しめなくなってきたなあ、と妙な感慨が深い*1。いうなれば、ミステリ的な水準が高いのはわかるけど、必ずしもそれがおもしろさに直結してない、と思ってしまう自分がいます、というか。まあ、そんな自分語りはさておき。
あらすじ。探偵、木更津悠也のもとに日本有数の財閥の当主、今鏡伊都から依頼の手紙が舞い込んだ。ともに届けられた脅迫状に興がそそられた彼は、「私」を伴って今鏡家の邸宅、蒼鴉城へと向かう。しかし、惨劇はすでに始まっていた……。
クローズド・サークル、首なし死体、密室、甦る死者、見立て殺人、とマニア(?)が涎垂らさんばかりの豪華な道具立ては、確かに楽しい。当たり前のように勿体をつける、木更津悠也、メルカトル鮎の両探偵のキャラクターだって、なんだかんだ言ってやっぱり好きだ。最後のどんでん返しも、その身も蓋のなさは俺の愛するところのものであり、それをもって反則だなんていいたてるほど野暮でもない。推理合戦は、まあ正直無理があるとは思うけど、十分に楽しめた。
そう、楽しめたんだけどね。どうにも「だから、何?」という思いが拭えない。なんつうか、叙述トリックが多過ぎる作品を読んだ時の感覚に近いと言うか。まあ、そこまで酷くはないけども。いまいち驚けない。「ふぅ〜ん、そう」で終わってしまった。
なんでかなあ……? なんでなんだろうねえ……。
というわけで、個人的な評価は別とすれば普通以上におもしろかったと思います。って、いまさら俺ごときが言うことではないですねー。これから新本格に手を出そうという人は、やっぱり早めに読んでおいた方がいいんじゃないでしょうか。素直に驚けるうちに。

*1:などといいつつ、実はそんなに新本格って読んでないのだけれども(^^;