『愛はさだめ、さだめは死 (ハヤカワ文庫SF)』ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア

てめえら、そんな本*1読んでる暇あったらティプトリーを読めっ、今すぐにっ! いいか、何度でも言うぞ。今すぐに、だ!
ってまあ、こんな言わずもがなな大傑作を今更読んだ俺が声高に叫ぶってのは意味がないのを通り越して、大変に恥ずかしいことだとはわかってるんですが。いいんだよ、どうせ普通に言ったところで誰も読まないだろうし、これだけ言っても読まない奴の方が多いんだから。
とにかくひたすらにムチャクチャ格好いい。「すべての種類のイエス」、「そしてわたしは失われた道をたどり、この場所を見いだした」、「愛はさだめ、さだめは死」――こうやって題名並べるだけでシビレル。
内容だって一級品。どんな頭の構造していればこんな会話を紡ぎ出せるのか(それがしかも、えらく格好いい!)全くわからない、でもとにかくその発想にただただ圧倒される、「すべての種類のイエス」がまず素晴らしい。しかも、これ、愛の話でもあるんだよね。えらいスケールだけど。科学の進歩、それが真理への近道なのかってのがメインテーマなのかな?な「そしてわたしは〜」もいい。個人的には自分の信じた道を歩き続ける主人公の、その誇り高さの方に感動を覚える。あとは、「接続された女」かな。サイバーパンクのはしり、という以上に皮肉たっぷりの愛の物語。軽薄な文体がいかにも、といった感じ。でも、中で白眉は表題作でしょう。純愛ブーム?クソ喰らえ。これ読んでから、そういう戯言は言ってくれ。そんな見栄を切りたくなるほど、素晴らしいっ! さだめに抗い、そしてそれに殉する覚悟の貴さ。そんな恥ずかしい台詞をほざいてしまうほど、打ちのめされました。そして、そのあとに「最後の午後に」を持ってくる意地の悪さ! もう、ぐうの音も出ません。完敗。
ん、まだこんなつまんない感想読んでたの? いいから本屋でも図書館でも何でもいいから、さっさと手に入れて読めっての。

*1:あなたが今読んでる本を当て嵌めて下さい