今年のベスト10

寒いと思ったら、雪が降り出してきたんですね。道理で。しかし、こういう冬のイベント時に雪が降るって久しぶりな気がします。うーん、ドラマチック?
さて、今年も終わりということで、折角ですんで今年読んだ中での個人的なベスト10など作ってみようかな、と。
では、まず10位から順番にどうぞ。

1発目はライトノベルから。池袋を舞台に狂った奴らが大暴れ、ってな感じでしょうか。サプライズがあったりとストーリー的には頑張ってるところが見えるものの、伏線の回収とかムダなキャラがいたりとチラホラと瑕疵が無くもなく。では、何故10位なのかというと登場人物の尽くがツボに入ったから。ストーカー女とか、愛に生きる男とか、人間ラブな情報屋とか、弟ラブなお姉さんとか、サブカルにどっぷりと漬かった頭のねじが何十本もぶっ飛んでるカップルとか、兎に角こいつらが暴れているだけで俺は楽しい。そう、俺限定。なのでこの位置。そのくらいの分別は残っています。

決して思い入れだけでなく、おもしろかったと思います。読後の感想はこちら。いやまあ、確かに冗長だしファン以外だと結構楽しめなかったりトリックがあれだったりするけど、そんなに悪いデキではないと思うんですよ。話題性込みでこの順位であるのは否定しませんが、作品自体だけをみればここら辺が妥当かと。

半身 (創元推理文庫)』と迷ったけど、悔しいことに純粋にビックリさせられたこちらを。いや、1部の最後でまじ呆然としてしまったよ。2、3ページつい読み返してしまったほど。それ以外の部分は個人的にはそうでもなかったんでこの位置ですが、森薫とかが好きな人だったりしたら、もう惚れてしまうんじゃないでしょうか。結末はちょっと蛇足気味だった気もするのだけど。仄めかしだけで充分だったというか。それでも、よかったと思いますー。

で、同じく結末にえらくビックリしたのだけど、それ以上に読後感の悪さの印象がすさまじいのがこれ。まさに暗黒の青春です。感想はこちら。や、今更西澤を取り上げるのもどうかと思ったんだけど、衝撃が凄かったので。読んだ後、鬱に陥ること請け合いです。読みましょう。

いやあ、愉快痛快というか。かましっぷりが素晴らしい。ミステリ畑の人はあれ読んで怒るかもしれないけど、あそこは笑いつつ恍惚とする方が正解なんじゃないか、と。あ、読後の感想はこちらを参照。ちなみに、ラストがどういうことかわかった人は北上次郎を超えたことになる*1そうですよ。挑戦してみては?

これはもう完全に「ごきげん目盛り」の印象ですね。これがなければ、入れなかったかと。あ、感想はこちらをみてくださいな。『虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫SF)』も読んだけど、この人は時折爆発するアイデアが素晴らしい。言い方は悪いけど、一発屋みたいな? や、そこまでひどくはないんだけど、その爆発力の凄さに他がどうしても霞んでしまう。立ち読みでもいいんで、『ごきげん目盛り』だけはぜひ。必読です。

これも今更、って感じですねえ。感想はここを。とにかく、格好いい。そして、熱い。さんざ言われているように、カジノシーンは手に汗握る展開でページ繰る手が止まりません。来年には『マルドゥック・ヴェロシティ』も刊行予定。読むなら、今のうちに。

シリーズ開始は昨年ですが、完全に今年で化けましたね。今、ライトノベルで最も打ち切られて欲しくないシリーズです。5巻の感想はここ。しかし、我ながら壊れてる感想だな(汗 最終的には『アルスラーン』とか『デルフィニア』みたいになって……くれたらいいなあ、と期待も篭めつつ。ただ、これからはSF寄りになりそうな気配が。それはそれで楽しみだけど、うーん。ともあれ、ライトノベル読んだことないーっ、って人でも入りやすいんじゃないかな。丁寧な仕事してますし。エンターテイメントに徹しているんで感想は出辛いけど、とにかく面白いんで。オススメです。

また出ました、奇想コレクション。「ンな阿呆な」と思わず洩らしてしまうよなホラ話っぷりが、実に楽しい短編集。感想はこちらを見て下さいな。全編バカ話ばかりなので、楽しんだ者勝ち、細かいこと考えた方が負けです。特に、<万能中国人ウィルスン・ウー>シリーズなんて楽し過ぎ。いや、ゆかいゆかい。恋人の父親の頭を叩いたら、時間の逆行が直るとか訳わからなさ過ぎです。とはいえ、「熊が火を発見する」なんてとぼけた感じの話が何時の間にか叙情的な話になっていたり、意外に油断もできないあたり侮れません。残念ながら、代表作である『世界の果てまで何マイル (ハヤカワ文庫SF)』が絶版だったり入手し辛いのが難点ですが。

個人的には、今年最大のめっけもんの作家。『人間以上 (ハヤカワ文庫 SF 317)』とか『きみの血を (ハヤカワ・ミステリ 1147)』とか色々あるけど、やはりファースト・インパクトということで、最初に手をつけたこれを。「影よ、影よ、影の国」のあまりにも鮮烈で詩的なイメージ、表題作の予想だにしない展開および最後に残るほの温かい気持ち、「ぶわん・ばっ!」の単純なことばの楽しさ、「タンディの物語」の得体の知れなさ、「雷と薔薇」での未来への悲観的でけれど、先鋭的なヴィジョン、「孤独の円盤」の切なさ、遣り切れなさ、そしてそれだけでない最後の救い、どれを取っても一級品。迂闊にカテゴライズできない、本当に傑作ぞろいだと思います。バリエーションもあるしわかりやすいし、入門としても最適。来年には、国書刊行会から『ヴィーナス・プラスX』が、河出書房から『輝く断片(仮)』が、それと晶文社からも何か企画があるようで実に楽しみ。スタージョン刊行ラッシュは、来年も続きそうです。


何かこうして見てみると、統一感がないんだか偏ってるんだかよくわからないラインナップですね。傾向を見出すとすると、若干SF寄りでしょうか。ただ単に奇想コレクションが多いだけ、という気もしますが。基本的に新刊を優先した形にしてみたので、必ずしも作品の質と正比例はしていないことは断っておきます。
他に取り上げたかった作品は名前だけ挙げておくと、ケリー・リンクスペシャリストの帽子 (ハヤカワ文庫FT)』、セオドア・ローザック『フリッカー、あるいは映画の魔〈上〉 (文春文庫)』『フリッカー、あるいは映画の魔〈下〉 (文春文庫)』、北村薫朝霧 (創元推理文庫)』、笙野頼子母の発達』、若竹七海依頼人は死んだ (文春文庫)』ってところかな。ちょっと多い?
ともあれ、今年は割りと量読めた方だったかなあ。何よりジャンルの幅を広げられて、個人的には満足。さて、長々と書いてきましたが、ここまで読んでくれた奇特な方は居られるのでしょうか?w 読んでくれた方、ありがとうございました。それでは、よいお年を。