『イッツ・オンリー・トーク』絲山秋子

イッツ・オンリー・トーク

イッツ・オンリー・トーク

本当は、『タイムスリップ〜』の方を先に読んでいるのだけど、こちらの方が書きやすかったので、取り敢えず。どうでもいいけど、“純文学”とかレッテル貼るの恥ずかしいね(^^;
収録作は表題作と「第七障害」の2篇。以下、あらすじ。

直感で蒲田に引っ越したら、旧友が都議会議員に立候補していた。いとこが自殺するというのを思い留まらせて、自分の家に居候させた。寂しい時は痴漢を呼んだ。そして、私の精神のサイクルは最低に入っていた。でも、結局は全てムダ話だった。

  • 「第七障害」

障害飛越競技で、早坂順子は第七障害を跳ぶのに失敗して結果的に馬を殺してしまった。恋人とも別れ、逃げるように東京へと引っ越した順子は、かつての乗馬仲間と出会って……。
えーっと、まず表題作。雰囲気的には「パーク・ライフ*1に近い、気がする。とりとめのなさ、とか。淡々と流れる日常。変わっていく周囲の人間の中で一人、ただ主人公だけが変わらない。そういう変にドラマチックでないのが抑制効いてる感じで良い、と思う。ラストなんて、もっと湿っぽくしそうなものだけど普通に流してるし。A賞候補になったってのも、まあわからないでもない。どうでもいいけど、微妙なサプライズがあるのはどうなんだ? そういう話でもなかろうに。
次、「第七障害」。おお、ちゃんと起承転結がある。わかりやすい。のはいいけど、これ完全に中間小説だよなあ……。でも、終盤の展開はちょっと胸にじいんと来た。元彼の妹にしてルームシェアリングの相手たる美緒が、妙に漫画的な*2キャラクターで戸惑った。可愛いけど。話に絡むかと思えば、そうでもないあたりはいいのか、と思わないでもない。恋愛小説として見れば、そこそこの出来ではないでしょうか。全体的に会話のセンスがいい。ギリギリのところでうそ臭さを回避しているあたり、上手いなあと素直に感心する。

正直、どうってことのない作品。でも、不思議に心惹かれる部分がある。ただ、差別的な言い方かもしれないけど、どっちかといえば女性の方が楽しめる気がした。むしろ、俺が感情移入して楽しんでしまう方が、なんだかなーって感じがしないでもない。評価としては、5点満点で2.5くらいかなー。
というか、この人ウチのOGなんですね。びっくり。

*1:吉田修一著。第127回芥川賞受賞作。

*2:自作の鼻歌を口ずさんだりとか