『世界の中心、針山さん』成田良悟

珍しく、連作短篇風味。とはいえ、最後はお得意の群像劇になるあたりはいいんだか悪いんだか。

としれじぇ
題名は、都市伝説=都市+レジェンド→としれじぇ、ってことね。いわゆる都市伝説によくあるベッドの下の殺人鬼を材にとったラヴストーリー。ザッピングが決まるようで決まってないのはにんともかんとも。Aパート終了時点で、そんなに謎が残ってないのがいけないのかな。

魔法少女893号
妄想と現実には区別をつけましょう、っていう話。だからって、魔法少女とその筋の人をくっつけることもないと思うー。まあ、ステレオタイプな任侠の人たちなので、落差はそれほどでもないが。パターンではあっても、改心して必死になってだけど上手くいかなくて過去の自分を悔いてそして――、というシチュは胸に来る。

拝啓、光の勇者様
成田、黒いのも何気に上手いじゃん。周りが段々と変貌していく、というのはホラーの常套手段ではあって、でもそれを反転させるとこれだけグロテスクになる、という。まあ、正義っていう言葉は胡散臭いよね、というただそれだけの話、といえばそう。最後の愛のかたちは切ない。

奇跡の中心、針山さん
そして、全てはここに収斂される。ここで歪ながらもハッピーエンドにしてしまうのが、成田の弱点にして美点だと思う。いろいろ誤魔化しだけど、結局自分とその周りが幸せであればいいよね、というのは真理な気はする。群像劇的には低調。最後は力業だしね。というか、銀島強過ぎ。ゲームバランス悪過ぎです。


俺は好きだけれど、人には薦めないかな。「おもしろい?」と訊かれたら、「うん」と答えるけど。まあ、そんな感じ。
評価:C+