『灼眼のシャナⅩ』高橋弥七郎

灼眼のシャナ〈10〉 (電撃文庫)

灼眼のシャナ〈10〉 (電撃文庫)

相変わらずの、単純明快、勧善懲悪、解釈の余地など一切ない、誰にでも変わらぬ顔を見せる揺らぎのなさ。とはいっても、文章が巧いというわけではなく(むしろ、漢語調の言葉選びをしているからハッタリ効いてるけど、文章世界はあまり豊かでない方だと思う)、要するに、心情を地の文で説明し過ぎ、ってことだけれど。本当、感想の書きがいがない、詰まるところ、こういうのが好きか嫌いかでしか語ることが出来ないのであるからして。こういうの、とはつまり、必然性のない凝った設定を用意してのドンパチやラブコメなどの願望充足型ストーリー、言ってみれば少年漫画的、より有体に言えばオタクっぽいお話のこと。そら、二つ名とか出されたら燃えまさあ、オトコノコだもの!
さて、今回の内容としては、主に過去関連でばら撒かれた伏線回収、設定説明、今後の布石ってところ……って書き出すまでのことじゃないか。直接的には5巻で、間接的にはちょこちょこと言及されてきた“棺の織手”とフレイムヘイズ達との『大戦』が描かれているわけですが、まあキャラ配置からして無駄の少ないこと。全てはB.F.先代炎髪灼眼のために、とばかりにアラストールと先代の関係を浮き彫りにするために配置されていて何ともはや。“棺の織手”の目的が明らかになったとき、作者の思惑が分かり易過ぎて、思わず苦笑してしまったよ。とはいえ、その思惑に見事に嵌まってしまった私が何をかいわんや、という感じではあります。ええ、ええ、泣きましたとも! ヴィルヘルミナとの別れのシーンと、最後の怪獣大決戦のシーンではっ! くそう、無駄に悔しいぞ。
しかし、相変わらずキャラの立て方は卒ないなあ。先代はやっぱりイイオンナだったし、チェルノボーグは純情っぷりが素晴らしいし、そして今回のお気に入りの痩せ牛はいろいろおいし過ぎ、そら惚れるさあ。まあ、今回、人数多かったから中途半端な人もいるけどね。『極光の射手』とか。いやちょい役だから仕方ないけど、あの扱いはひどいなあw
総じてシリーズのいちエピソードとして、或いはライトノベル的奈娯楽作として、かなりよく出来ておりました。うん、美味。
評価:B−