『春季限定いちごタルト事件』米澤穂信

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

前回の反省を踏まえて、手短に。
まだ2冊しか著作を読んでないから速断かもしれないけど、でも何となく傾向がわかった気がする。
この人は、ミステリーを出汁にキャラクターを書きたいんだね。だから、最大の謎を発生した事件ではなく、キャラクターの内面に設定する。
氷菓』で言えば、「なぜ千反田えるは、叔父の話を聞いて泣いてしまったのか?」
そして、本作で言えば、「なぜ小鳩君と小山内さんは小市民を目指すのか?」
あくまでそこが本道であり、故にその過程で起こる事件は、そうした関係性を適度に動揺させる程度の他愛のないものになる*1。それが悪いといっているんじゃあない。目指すところが違う、というただそれだけだ。
そんなわけで、この作品はミステリーというより「ミステリー風味の青春ストーリー」の方が正しい気がします。実際、小鳩君の「認めたくないものだな、若さゆえの過ちというのは」的な懊悩はいかにも思春期といった感じですし。
あー、なんかツボに嵌まったかもしれません。このまま他の作品も読んでみようかな。
評価:C+

*1:もっともらしく言っている割にこのことは『氷菓』にはあんまり当て嵌まってないですけど(苦笑