『幻惑密室』西澤保彦

幻惑密室―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)

幻惑密室―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)

氏お得意のSFパズラー。でも、この系統は私は初めてだったり。
相変わらず、無闇にドロドロした設定。しかも、のっけからまるでノルマのように何の勿体もつけずに語られてしまうものだから、さすがに驚く。
パズラー自体の出来はまあ、普通? それほど凄いとは感じなかったかなー。犯行動機に文句をつける人もいそう*1だけど、個人的にはリアリティのなさがリアルだとは思う。まあ、それ以前にパズラーに動機云々を言うほど野暮ではないつもり。
それよりなにより、その動機を補強するつもりなのか、滔々と語られる男女観やらなんやらなが何とも居心地が悪い。「言いたいことはそう間違ってないだろうけれど、それはいくらなんでも極論ですよ!」みたいな気持ちになる。加えて、出て来る登場人物たちの戯画化が著しい*2から、余計に作為の匂いがきつくて、正直読み飛ばしてしまったよ。
もう少しスマートに出来ないものかなあ、タックシリーズはある意味そこはメインだったから気にならなかったけれど、今回みたいにそうでもないときは……。
総じて、メインの部分より装飾の部分が気になって素直に楽しめない作品といった印象。あ、でも、神麻嗣子さんは大変に可愛らしかったです。ええ、ええ、実に可愛かったです。大変に和む。
評価:C

*1:いや、言うような人はそもそも読まないか

*2:わかっててやってるんだろうけれど