『柳生忍法帖』山田風太郎

柳生忍法帖(上) 山田風太郎忍法帖(9) (講談社文庫)

柳生忍法帖(上) 山田風太郎忍法帖(9) (講談社文庫)

柳生忍法帖(下) 山田風太郎忍法帖(10) (講談社文庫)

柳生忍法帖(下) 山田風太郎忍法帖(10) (講談社文庫)

面白いんだけど、あんまり言うことがない。
例えば、この枚数をぐいぐいと読ませるストーリーテリングの妙、とか、魅力的なキャラクター造形だとか、通り一遍の褒め方はできる。けれど、それでは全く十分ではないし、かといって、他の褒め言葉を挙げようと思っても、いまいちぴったりの言葉が思いつかないのだ。というのは、上記の二つがあまりに完璧なだけなんだから。
まあ、難点がないとまではいわない。堀家の女7人それぞれの書き分けがいまいちで、個体識別がしづらいけれど、とはいえ、それは決して致命的な瑕疵ではないし。
あとは、「夢山彦」の効果に拍子抜けしてしまったのは……まあ、私が「セカイよりキミが大事」的な話を多く読んでいた為なんでしょうね。だからといって、沢庵を喝破する十兵衛に小気味良さを感じないわけでなく、またその論理もいわゆるセカイ系とは違う論理で成り立っているあたり、健康的だなあ、とも感じるわけですが。
しかし、これだけ分厚いのに、展開がスピーディーに感じられてしまうんだから、すごいアイデアの詰め込みよう。ともかく、読め、で全て解決するような気もする。
評価:B+