『葦と百合 (集英社文庫)』奥泉光

葦と百合 (集英社文庫)

葦と百合 (集英社文庫)

現代文明を捨て自然と共に生きることを目標としたコミューン運動「葦の会」。学生時代、そこに参加していた医師・式根は、15年ぶりに友人とかつての恋人に会う為に彼らの入植地を訪れるも、荒廃しきっていた。いったい彼らはどこに? そして、また時を同じくして起こった怪死事件との関係は?
ぼくのすきなメタフィクション。ということで、もう大満足です。格調高くもストレスを感じさせない文章、煙に巻かれるような幻惑的な結末、どれを取っても一級品という気がします。案外キャラが立ってるのも、自分のようなダメな読者にとってはありがたい。愛すべき俗物である中山氏の言動は、緊密なストーリーの中にあっていいガス抜きです。
決して理解が容易い作品ではありませんが*1、法月の解説でのフォローもあるので敷居が高過ぎるということもないと思うのですけれど、さて。
評価:B+

*1:事実、たぶん俺は出来てない