『世界は密室でできている。 (講談社ノベルス)』舞城王太郎

世界は密室でできている。 (講談社ノベルス)

世界は密室でできている。 (講談社ノベルス)

煙か土か食い物』の印象があまり良くなかった所為かなんとなーく手を出せていなかったのですが、ことここに至って読まないという選択肢はなかろう、ということで読んでみました。
……うあ、えらいおもしろいじゃん!
――煙になれなかった「涼ちゃん」が死んで二年。十五歳になった「僕」と十四歳の名探偵「ルンババ」が行く東京への修学旅行は僕たちの“世界と密室”をめぐる冒険の始まりだった!
ここまでリーダビリティ高かったっけ!?と、数年前の自分の記憶を疑ってしまうほどテンポよくぽんぽんと読めてびっくり。改行は少ないし文中に→とかあるし、で本来なら読み辛いっていうか腹立つはずなのになー。
でも、それより何よりストーリー自体がいい! これはセーシュンだよ、セーシュン。過ぎ去ってしまったエレジー。ラスト、落涙には至らなかったけど胸に来るものがあったよ。というかね、映像的に目に浮かんで、しかもそれがすごくきれいで、やっぱりちょっと泣けますわ。いや、泣かなかったんだけどね。「世界」と「密室」。この一見つながらなさそうな2つの言葉が表すもの。本当に巧い、というか発想がやっぱり天才的だわ、このひと。あ、いうまでもないけどトリックとかそういうのを求めてはいけない作品ですのでそこんとこヨロシク。
や、堪能しました。うー、もっと文庫化してくれないかなあ。ノベルスって言う体裁は、個人的美的感覚からすると美しくないんだよなあ。うー。
評価:B+