『悪魔が来りて笛を吹く (角川文庫)』横溝正史

昨日の土曜ワイドの出来が余りにアレだったので、口直しの意味で。
あらすじ。当主である椿英輔元子爵の失踪を幕開けとして、椿家に次々と起こる怪事件。果たして本当に英輔は死んでいるのか? 世を震撼させた天銀堂事件との関わりは? そして、ついに英輔の娘美禰子が金田一耕助を訪ね招待した占いの会、どこからともなく英輔の遺作であるフルート曲“悪魔が来りて笛を吹く”が流れて――。
片手で数えられるほどしか読んでないのにこんなことを言うと石を投げられそうだけれど、わたし好きなんです、金田一耕助。お茶目なところとかが。本作でも例によって例の如く、ある人物を怪しく思っていても事件の全貌を見抜くまで放っておいた挙句、犯人が目的を完遂してから推理を披露しあまつさえ後悔したりするのだから素敵過ぎる。頼むな。追い出せ。そんな探偵。いや、本当に愛すべきキャラクターです。さて、金田一と言えば閉鎖的なムラ社会だとかドロドロの人間関係なわけですが、旧華族の没落と頽廃を描いた本作もその意味で期待に違わない厭さ。いいぞ、もっとやれ。ロジックに関しては余りメインとは感じないものの言われて「ほう」とは唸れる……けど、それを期待する作品ではないよなあ、とは自分の勝手な思いこみか。それにしても、ラストシーンは素晴らしいですね。言うまでもないことなのでしょうが。
評価:B+