『だからドロシー帰っておいで (角川ホラー文庫)』牧野修

だからドロシー帰っておいで (角川ホラー文庫)

だからドロシー帰っておいで (角川ホラー文庫)

昨日の『虹の彼方に』を受けてオズの魔法使いつながりでこれという悪趣味というよりもう既に悪意すら感じさせるチョイスをしてみたのですがそれはさておき取り敢えずあらすじ。
内気で平凡な主婦、伸江はある日、義母に「ちょっと出掛けてきます」と言い置いて妄想の世界へと旅立った。そこで、彼女はかつてない開放感を感じ逞しくなっていったのだが、現実の世界では彼女による血と狂気の惨劇が行われていて――。
普通ファンタジーというものは現実を抽象化したものであってその点からいえば今のライトノベルのファンタジーはファンタジーではないよなあとも思ったりするのだがそれはまあ余談。さて何の話をしていたんだっけかそうだそうだファンタジーについてでした、そうこれはその抽象化して語られたファンタジーがその語られた直後にそれを現実に翻訳しなおすという禁断の所業を犯しているのですが、これは要するに例えば異世界で伸江の行く手を防ぐ敵を倒したという時それは実は現実の人物を殺していることになってつまり殺人事件発生!ということになるわけで、だからファンタジーパートですごく感動的なことが語られるその裏では血みどろな惨劇が現在絶賛進行中という何ともグロテスクな事態に陥いることになりなまじっか正論が語られて感動しかけても素直に同意できない自分が観測されて落ちつきのない気分になれるのでこれはぜひオススメです楽しいですよ。
評価:B−