『魔法 (ハヤカワ文庫FT)』クリストファー・プリースト

魔法 (ハヤカワ文庫FT)

魔法 (ハヤカワ文庫FT)

いまのところ、私はただの“わたし”だが、やがて名前をもつようになるだろう。この話は、さまざまな声で語られた、わたし自身の物語なのだ。

すばらしい! すばらしい! すばらしい!
あらすじ。テロに巻き込まれ、記憶を失った報道カメラマンのグレイ。記憶喪失に陥った彼のところに、ある日かつての恋人を名乗る女性が訪れる。彼女の名は、スーザン。その訪問から、少しずつ記憶の断片が甦ってくるのだが……。
参った。もう、凄いという感想しか浮かんできません。パートごとに変わる視点と叙法、それが内包する謎、明かされたと思った真相が謎へと変わっていく構成、そして何よりその結末。確かに、これは“魔法”に違いありません。
便宜上ファンタジーとしておきましたが、実際にはカテゴライズできない――敢えて言うなら幻想小説、が近い気はします。とにかく、素晴らしいの一言。読みましょう。