『小川未明童話集 (新潮文庫)』小川未明

小川未明童話集 (新潮文庫)

小川未明童話集 (新潮文庫)

ああ、なんかどんどん自分の読書傾向は迷走していくなあ……。というわけで、童話作家として有名な小川未明の童話集。
人間はこの世の中で一番やさしいものだと聞いている――海の底で寂しく暮らす人魚が人間界に託した子供の悲しい運命を描く「赤いろうそくと人魚」に代表されるように、どちらかというとトーンが暗めの話が多い。陽性というより、陰性の童話、という感じ。とはいえ、鬱々としてはいないので読後感は決して悪くない。ストーリー的には、童話ということもあって捻った物はないものの、メルヘンさがちょうどいい不条理さを醸し出していて、退屈せず読める。もちろん、一篇が短いことのほうが大きいけど。
平易な文章ながら、詩情溢れていて日本語としても美しい。さらっと読むにはちょうどいい1冊。