『日の名残り』カズオ・イシグロ

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

名家に務めてきた執事である、スティーブンスは主人の外出をいい機会にと勧めもあって、かつての仕事仲間ミス・キントンを訪ねに旅行に出ることにする。古きよきイギリスの風景を眺めつつ、道すがら思い出すのは偉大な執事であった父のこと、心から尊敬していた先代の主人のこと、そして、ミス・キントンのこと。その旅行の終着点で、彼の胸によぎるものは……。
なんつうか、えらく面白かったんですけど。いや、この物言いが不遜なのは百も承知の上ですが、驚いたもので。いわゆるブンガクってのを、素直に面白いと思えるのは自分にしては珍しいんですよ。イギリス最高の文学賞ブッカー賞受賞、だそうです。
一人称で語られるものだから、実際に起こっていることは結構酷いのかな、と思ったらそうでもなかった。割と、素直に感動系。ただ、特に前半あたりはそうした描写(父親についてのくだりなど)があったけれど。しかし、この主人公の仕事以外についての無知っぷりは切ないながらも愛すべきキャラクター、といった感じでいいですね。語り口も真面目くさった感じで、皮肉を言っているような文体でさくさく読めます。
ところで、脳内でミス・キントンをツンデレに変換しながら読むのはだめですかそうですか。