『何かが道をやってくる』レイ・ブラッドベリ

何かが道をやってくる (創元SF文庫)

何かが道をやってくる (創元SF文庫)

読み終わるのに随分と時間がかかってしまった。
別に読みにくかったわけじゃないんだけどね。ただ、やっぱり序盤は辛かったかな。悪文では決してないけど……視点がね。そう、一定しない。主人公となるのがウィルとジムという二人の少年なのだけれど、その所為でどっちの言動だったのか、が掴みづらいんだよね。話が進んでいけば、直にわかるようになっていくんだけど……。
ストーリー的には……。剪定できていない盆栽、って感じ? うん、伏線が回収し切れてない。はみ出した部分がある。ただし、そのはみ出した枝自体は決して悪くない、むしろ、ひどく魅力的なんだよね。例えば、冒頭の避雷針のくだりとか。或いは、十月に関するところとかもそう。そうした部分が、雰囲気作りには一役かってる部分が確かにあるから一概には否定できない。ストーリーをとるか、世界観をとるか。ここらへんは個人の好みかもしれない。
あと、自分にはこれって父権回復の話って気がした。年老いた父親が、まだ幼さの残る自分の息子に対して、立派な父親たりえているかについての自信を取り戻す、みたいな。うーん、それは流石に読み違えかもしれないねえ。
ファンタジー的な意匠に関しては? 個人的には好き。回転木馬とか、魔女とか、気球とか。ここらへんは、SFの抒情詩人たるブラッドベリの面目躍如、ってところかな。
最終的な評価としては3.5点くらい。厳し過ぎ? うん、そうかも。短編の方が、1篇1篇が濃密な気がして個人的には好みだった所為もあるかな。期待が大き過ぎた、というか。基本的には楽しめました。