『暗黒館の殺人』綾辻行人

暗黒館の殺人 (上) (講談社ノベルス)

暗黒館の殺人 (上) (講談社ノベルス)

暗黒館の殺人 (下) (講談社ノベルス)

暗黒館の殺人 (下) (講談社ノベルス)

『黒猫館』から12年、発表してから8年……。ファン待望の館シリーズの最新作にして、集大成!
……とまあ、枕文としてはこんなところか。

九州の山深く、外界から隔絶された湖の小島に建つ暗黒館と呼ばれる異形の館。「中也」こと私は、友人で館の当主・浦登玄遥の息子、玄児に招かれ訪れることになる。そこで、私は<ダリアの宴>なる妖しげな晩餐へと招待され、参加するのだが……。
雰囲気としては『館』というよりも、『囁き』に近い。ひたすらに強調される暗黒館の異形さ、<ダリアの宴>という奇妙な儀式、そして浦登家の妖しげな人々……。ざっと道具立てを見渡しただけでも、その幻想色の強さは窺い知れる。
ただ、シリーズ集大成というのは確かにその通りで、あれとかこれとかそれとか最後にはあの人までが!というサービスっぷりは素晴らしい。逆に言うと、これまでの作品を読んでない人にとっては面白さが半減してしまうという。単品で楽しめないこともないけどね……。
ミステリ的な仕掛けに付いては……まあ、気付くでしょう、普通は(少なくとも中盤には否応なく気付かざるを得ない……)。その仕掛け方が余りにあからさま且つ可能にするための技法がアクロバティック過ぎて、逆にそうとは考えない人もいる気がするが(というか、自分がそうだった)。率直に言えば、トリックで感心するところはなかったです。ただ、ホワイダニット的な部分に関しては良かったかな。フェアかどうかは甚だ疑問だけれども。どうでもいいけど、トリックの解説がやたらと懇切丁寧で笑った。
登場人物的には美鳥・美魚の双子の姉妹が狙ってるなーと思いつつもツボに来たw 「もしかしたら、これが新時代の“萌え”か!?」と思うも、1秒後に自己否定。まあ、小説だからこそ、か。あとは……鬼丸老ですかね、うん。
さて、今作を語るにあたってその長さに言及しないわけにはいかないでしょう。とにかく、冗長。もう少しどうにかならんかったものかな、と。正直、アーヤは文章上手い方じゃないので、(特に前半は)くどくどしくて辛かった。
さて、たらたらと文句もいっぱいだったわけだが、それでも自分的な評価は低くないという不思議。まあ、館に関しては思い入れがあり過ぎるので冷静な評価は出来ない、ということで勘弁w 一応、最後にフォローするならば、決して駄作ではない。作者の幻想趣味(『サスペリア』とか好きらしい)全開の実に楽しい作品だと、個人的には思う。ただ、人が殺せそうなほど分厚いし上下巻合わせて3000円と高いし……なので文庫落ちを待った方が正解なのかも、とも思う。もしかしたら、その時までに『十角館』から『黒猫館』までを読んでおくのがベストなのかもしれない。