『人獣細工』小林泰三

人獣細工 (角川ホラー文庫)

人獣細工 (角川ホラー文庫)

度重なる臓器移植によって継ぎはぎだらけの身体となってしまった女性の恐怖と絶望を描いた表題作ほか2篇を含む第二短篇集。以下、それぞれについてすこしだけ。

「人獣細工」
グロい。悪趣味。“ヒトブタ”という単語を引っ張ってきた時点で、半分は成功よね、という。
前作と同様、自己言及がテーマだけど、最後の最後で有耶無耶になるのはホラーの宿命か。オチは見えていても、絵面のグロテスクさで充分に怖い。

「吸血狩り」
落とし方がそれ以外にないことはわかっていても、あの終わり方はやっぱり逃げられた気がしてならない。どちらとも取れるように、気を遣っているだろう描写には素直に感心。だけに、裏切られることを期待していたのだけど。

「本」
やり過ぎの、コメディと紙一重スラップスティックな描写が、気持ち悪くて楽しい。他に見せようはあるだろうに、敢えて、というあたりが。恐怖の伝染の仕方の、そのアイデアもおもしろい。前例はありそうだけれど、応用している感じ。ただ、最後が鮮やかに決まり過ぎて、返って陳腐な感じがして、それは残念。


評価:C