『忍法八犬伝』山田風太郎
- 作者: 山田風太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/02/12
- メディア: 文庫
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あの名作(といっても、未読ですが)『南総里見八犬伝』を下敷きに、その子孫たちが盗まれた“忠孝悌仁義礼智信”の八つの珠を取り返すために、伊賀のくノ一たちと忍術合戦を繰り広げる、というのが大まかなストーリー。おもしろいのが、その子孫たちというのが皆、例の“忠孝悌仁義礼智信”に反感を覚えている、という辺り。そんな彼等が唯一、忠義を尽くすのが主君の奥方である村雨の方。我関せずをきめていた彼等が、彼女に頼まれると人が変わったように、死地へと赴いていくのが小気味良くも切ない。滅びの美学、っていうと何か問題ある気もするけれど、やっぱりそれはあるよなあ、と思う。それでも悲壮感がそんなにないのは、彼等が決して気負ってではなく、惚れた村雨の方にいいところを見せよう、という子供じみた見栄からの行動だからでしょう。
史実との擦り合せがそんなにない分、『風来忍法帖』には譲りますが、これまで読んだ中でも上位にくる楽しさ。450ページ強が、あっという間です。
評価:B+