『名探偵は密航中』若竹七海
- 作者: 若竹七海
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2003/03/12
- メディア: 文庫
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長編かとおもってたら、連作短編だった、という個人的な驚きはともかく。個々の事件は小粒ながら工夫を凝らしたものが多い。いきなり変化球の「殺人者出帆」、どちらとも解釈できるラストの怖さが真正ホラーにも劣らない「幽霊船出現」、真相がいろいろ台無しな「船上の悪女」あたりが、個人的には面白かったかな。登場人物もリアルに自分勝手で嫌らしくて人間臭いのが素晴らしい。是非お友達になりたくありません。
ただ、短編ごとに中心となる人物が異なっているのが、どうにも統一感を乏しくさせてしまっている感じが。それをつなぐのが、章の合間に挟まれる「旅行記下書き」なのだけれども、うーん。やっぱり、バラバラな感じは否めないなー。
一番の不満は、曖昧な決着にしている一篇があって件の「旅行記」において疑問を提示するのだけれど(そして、その推理は決して的外れなものでない)、最終的に解決がないこと。全てについて白黒ハッキリつける必要はないけれど、わざわざ触れておきながら投げっぱなしなのは、個人的にはちょっと納得できないなー。ラストのオチも、唐突過ぎて驚くに驚けないだけ余計に。
決してつまらなくはないんだけれど、どうにも消化不良といった感じ。
評価:C