『ブギーポップ・バウンディング ロスト・メビウス (電撃文庫)』上遠野浩平

うん、まあまあ良かったんじゃないでしょうか。話に起伏があまりない、カタルシスにも欠ける、というか何も解決していない、あたりはちょっとどうかと思うけど、個人的にダメダメだった『ジンクス・ショップ』と比べて、かなり整理されているし。や、割と引きの要素が強い分、薄味だっただけかもしれませんが。
個人的には、織機綺にまたスポットがあたったのは嬉しいところ。華のあまりないこのシリーズで、割と平和にカップルしてる彼女らを見てると和む和む。とはいえ、今回は大変なことに巻き込まれてしまうわけですが。彼女の心の葛藤の解消は、傍流とはいえクライマックスのひとつにでもなるのかな? 一方、もう1人のメインである蒼依は、今回はいまいち活躍しなかったけれど、それはとどのつまり再登場があるということでしょうか。彼の葛藤も実は解消されたというわけでもないですしね。新キャラとしては、リセットに双子の姉が!とか、ただのやられ役かと思った長谷部は実は――!だったりとか、今後の興味という意味では楽しみでなくもないけど、うーん、しかし、本当に一般人が出なくなってしまったなー。何となく、世界が閉じるというか、狭くなってしまう気がするので残念ではある。
それにしても、収束に向かっている雰囲気なのに、風呂敷を広げてもいる辺り、きちんと纏められるかどうか……というより、纏める気があるのか少々不安。まあ、物語的に拡散していくのもアリだとは思いますけど。
どうでもいいけど、今回妙にツボに嵌まった一節。

そこは、その名を聞けば国中の人間が目を剥いて驚くような、そういう公共機関の頂点近くにある執務室だった。

頭わるそうな文章、というか何というか。いや、一文だけ取り出してどうこう言うのも馬鹿らしいと思うけどね。
評価:C+