『西の魔女が死んだ』梨木香歩

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

日本児童文学者協会新人賞ほか3賞受賞の児童文学の傑作、ということでいいんでしょうか? 中学に進学してから登校拒否になってしまった、まいは西の魔女こと大好きなおばあちゃんの所へ行くことになった。そこで、魔女の手ほどきを受けることになったまい。けれど、魔女修行の肝心要は、何でも自分で決めるということで……。
あー、うー、微妙。流れる雰囲気は割と好きなんだけど、時折出てくる説教臭さというか分別臭さがどうにも鼻にかかる。そこらへんは、まいの中学生の少女らしい潔癖さにも垣間見えて。そうした感情は当然だと思うんだけど、物語的にそれが肯定されてるような気がしてなんとも座りが悪い。でも、そういう非難が「だって児童文学だし」で封じられてしまいそうなんだよなー。うーん、フラストレーション溜まる。
キャラクター的には、おばあちゃんが魅力的。温和そうなのに、笑い方が“にやり”ってところが。つうかね、はっきり言ってしまえば、それ以外が乏しい。まいに感情移入できるようならいいんだろうけど、さすがにねえ……。それと、「おばあちゃん、大好き」「アイ、ノウ」というクリシェは、ちょっとしゃらくさい。
あと、感じたのは視点について無頓着だな、と。基本的にまい視点の三人称なんだけど、平気で変わるし、過去の話での現在への言及も気軽にやっている印象で。まあ、別にそれだけなら読み辛くなければ問題ないんだけど……。これ、地の文での呼び方が、まいが呼ぶ呼び方と同じなんだよ。例えば、藤沢さん、とか、あやさん、とか。それで、まいの知り得ない部分までやってしまうから、どうにも居心地が悪い。まい=神の視点、みたいで。あー、でもこれも「だって(ry」で片付けられてしまいそうだなー。
描写的には、上手い作家さんだったので(p.121の今日は昨日の続きだった、とか平易な文章なのに実に上手い)、この作品がたまたま合わなかっただけかも。処女作だしね。機会があれば、別のも読んでみようかな。でも、当分はいいや。