『おもいでエマノン』梶尾真治

おもいでエマノン (徳間デュアル文庫)

おもいでエマノン (徳間デュアル文庫)

読了。
地球上に生物が生まれてからの記憶を全て持つエマノンを、主人公(というより、狂言回しに近いかな)にした連作短編。以下、各編の感想を一言ずつ。

  • 「おもいでエマノンエマノン、初登場の巻。彼女の紹介以上でも以下でもない。
  • 「さかしまエングラム」驚愕のオチ。ここまでやられると白旗を上げざるをえません。
  • 「ゆきずりアムネジア」親父たちのエレジー、といった感。
  • 「とまどいオクトゥーヴ」珍しくエマノンが主役。ツチノコのキャラクターが濃過ぎで、どうにも気になった。
  • 「うらぎりガリオン」よくあるコンピュータ暴走もの。緊迫感に欠けるのが難点といえば、難点。
  • 「たそがれコンタクト」アイデアの使い捨てっぷりが素敵。いちばん切ない話だったかな。
  • 「しおかぜエヴォリューション」ミクロとマクロの対比がすさまじい。要は、主観の問題なのだよ。
  • 「あしびきデイドリーム」ややこしい。綺麗にまとめているけど、細かいことが気になって素直に感動できず。そんなに簡単に山の中で暮らせないよなあ…。

全編通して、アイデンティティーというか、自分の存在意義の探求がテーマになっているのが多い気がした。エマノンからしてそうだし。しかし、どうにも言葉足らず。どれも短編向きのネタなのだけれど、もう少しページを費やして欲しかった。